多分、生まれて初めて「父の日に」父にありがとうを言った。

ことにしとけ？

・・・や、ウチは
誕生日はもちろん
こどもの日だとか父の日だとか母の日だとかは
とんと縁のない（なぁ〜んにもしない）家だったわけで。
ん〜・・・さすがに
クリスマスの時は、ツリー飾ったりケーキ食べたりはした。
大晦日の夕ご飯は、ちょっとご馳走だったりとか。
その程度。

学校で絵を描かされたりするから、描いて家に持って帰ったり。
それくらいかなぁ。

母の日はさすがに
花を宅配で手配はしてるけど。

こないだ実家に行ったら、
おそらく弟がプレゼントしたであろう花一輪が、
枯れきって真っ黒になったまま、
花瓶に刺さっていた。
毎日毎日、
ハハオヤが座るダイニングテーブルの席の、
真ん前においてある花瓶だというのに、よ？
少ししおれただけで
さっさと花はゴミに捨てるような人だったけど。
おそらく、昔あたしに言ったように
もらった目の前で
「花はねー、バラが一番きれいなんだよ。」
そう言い放ったんだろうと思う。
あたしの送ったバラのアレンジは、もう片付けられていたけど
目の前の花瓶に挿した、好きでもない花は
枯れてもどうでもいいってか。
みたいなね・・・。

あたしが高校を卒業して家を出てから、
両親は別居をはじめたので、
あれから父の日も、父は家に居ないわけで。

だから今日も、
いつものようにごく普通に
1日を終えるのだとばかり思ってた。

と思ったら。

電話が。

早めの、弟弐の法事の打ち合わせかな、と思ったら
いつもの

「実家の冷蔵庫に刺身持ってきてある。
ハハオヤとお前の分と、別々に分けてあるから、食べなさい」

と。

おそらく、「父の日に」初めて口にした
父への、いつもと違う感情も込めての

「ありがとう。」

その後の言葉も見つからないまま、
お互いになかなか電話を切れずに。

いつもより長めの沈黙を、
あたし達は持て余して、無言のまま切った。